月のふりかえり 8月~小説・エッセイ編
図書館で本を借りたよ~
図書館利用。
二十四節気、七十二候のできごとや季語をいくつか編集者からお題をいただいて、そのうちのどれかについて著者が連載エッセイとして書いた文章をまとめた本。
連載が進んでいくにつれtどんどん調子が上がっていく様がおもしろい。時には何も思いつかないお題のときもあったりして。
あとがきにもあったが、子どものころを思い出して書いてあることが多い。
会社員だったころとプロの小説家になってからとで生活が変わっていくところも興味深かった。
ドラマを見たのはいつだったか。今でもいくつかのサブスクで見られるようだ。本書を読んでドラマは原作の雰囲気のまま映像化していてとてもよかったのだなあと感想を新たにした。
主人公のアキコは出版社で編集者として料理研究家の本をつくっていく中で料理に魅せられ、母が死に編集部門から経理部門に異動になったことをきっかけに実家の食堂を改装して、パンとスープを日替わりで出すカフェをはじめる。
アルバイトのしまちゃんがいい子で、カフェは人気店になる。クウネル(今のではなくかつての)好きな女子中心に人気が出るのだが、客層が偏ることに悩んだりお向かいの少しさびれた喫茶店の女性店主からの直接的な進言を気にしたりもする。終盤は母の死よりも悲しむような出来事が起きる。主人公はずっと悲しんでいて、ちょっとやるせなかった。
アナキズムの思想と実践について独特な文体で書かれたエッセイ。
岩波新書にはいっていることにまず驚きだが、いいぞもっとやれとおもった。
アナキズムには様々な思想があり、中でも「エコアナキズム」が興味深かった。グレタ・トゥーンベリの実践はこの思想に近いのではないだろうか。
いくつか引用しておく。
地球がどうこうっていうやつがいるんだけど、おまえ、なに目線でいってんだよってことだ。けっきょくそれってお前の理想としている「自然」を他人に敷いているだけのことなんじゃないのか。
(p.57)
環境破壊にたちむかうぞっていうひとたちが「自然」ってことばをもちだすとき、けっきょく、それを資源としてあつかってしまいがちだということだ。人間がコントロールできるものだって考えがちだということだ。
(p. 61)
近年の「環境保全」が叫ばれる風潮になにかしっくりしないものを感じていたところだったので、言語化してくれてありがとうという気持ちだ。
- 分類:小説
- 作者:吉永南央
- 題名:その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ
- 出版社・レーベル:文春文庫 kindle版
- 評価:★★★☆☆
アパートの裏手に捨てられていた人形をきっかけに明らかになっていくきな臭い事件。
些末なことも伏線になっていておもしろかった。
すべてがベストな形で収まらないところがこの小説のいいところでもあると思う。