物語消費しすぎ地獄へようこそ

何かしら作られたもの、作られてしまうもの=物語を消費せずに一日を終われない。

月のふりかえり 7月~小説・エッセイ編

夏ドラマが始まったけど読書もしたよ~

  • 分類:小説
  • 作者:今野敏
  • 題名:回帰 警視庁強行班係・樋口顕
  • 出版社・レーベル:幻冬舎
  • 評価:★★★★☆

図書館利用。
主人公の樋口顕の母校のすぐ近くで車が爆発する事件が発生し、それがテロかそうでないかで捜査を行う話。
シリーズの本書の前の長編の内容をほぼ忘れていて、天野管理官が内緒で会っていた元刑事の自称ジャーナリストの男のことをまったく覚えていなかったが、それでも楽しめた。

これまでのシリーズのどの著作よりも主人公が謙虚で自己評価よりも周りの評価が高いのに戸惑っているのがいい。ドラマの樋口顕よりも内面の葛藤があって、そこがいい。

「井伏さんは悪人です」という有名すぎる太宰の遺書の言葉の謎を追うミステリ長編。

太宰治の著作は好きでよく読んできたけれど、人間としては自殺未遂を繰り返して周りに迷惑をかけまくる姿があまりに自分勝手で、著作はおもしろいけど人としてはちょっとどうなのという印象ばかりが残った。
井伏さんは悪人ではないと思う。太宰に振り回されて本当にかわいそうに思った。

  • 分類:小説
  • 作者:今野敏
  • 題名:帝都争乱 サーベル警視庁(2)
  • 出版社・レーベル:小学館
  • 評価:★★★☆☆

図書館利用。
文庫が出ていたので読んでみた。シリーズの1も読了。

日露戦争の勝利で日本が得た賠償があまりに見合わないということに不満を持ち、さらに戦争によって課された重税に疲弊した民衆が騒擾を起こす。
その騒ぎを収めるために動員された警視庁の警察官たち。物語の主人公たち・警視庁の巡査と刑事らは時の首相桂太郎の愛妾・お鯉とその家を警護する役割を命じられた。
騒動に乗じて暴徒がお鯉の家に押しかけて暴れる。それがひいたあとで奥の間で見つかる壮士風の男の他殺死体。その身元は?犯人は?というストーリー。

なぜか警察の仕事に自分からまきこまれる女子学生とかありえない展開があるものの、フィクションとしてはおもしろい設定だし、新選組が好きな人には斎藤一こと藤田五郎が活躍するので楽しめると思う。

  • 分類:エッセイ
  • 作者:頭木弘樹
  • 題名:絶望読書
  • 出版社・レーベル:河出文庫
  • 評価:★★★★☆

「絶望している最中に本など読めるか」と思っていたのだが、絶望し何もできない期間から少し立ち直りかけた時から読書がそんな心に効くということが冒頭に書いてある。
音楽にしても絶望から立ち直る初期には楽しくて明るいポジティブな音楽よりも、暗くて湿っぽい音楽のほうが寄り添ってくれるような気がするので、読書も同じことだという。

「物語は必要な栄養であり、現実を知らせてくれるもの」なのだという言葉が心に残った。
小説を読まないということをマウンティングの種にしてくる人がいるが、上の言葉をつきつけたい。

本書では小説のみならず、詩や落語、ドラマ、映画を紹介している。
そして最後には読んではいけない小説として「七階」も紹介されている。

本書を読んでカフカの『変身』を読み始めた。
わたしが買ったのは新潮文庫だけど、角川文庫のは新訳。

「七階」が収録されているのは↓