物語消費しすぎ地獄へようこそ

何かしら作られたもの、作られてしまうもの=物語を消費せずに一日を終われない。

月のふりかえり 9月~小説・エッセイ編

9月ってあれ、何やってたのかな~

  • 分類:エッセイ
  • 作者:榎本まみ
  • 題名:督促OL 修行日記
  • 出版社・レーベル:文春文庫 kindle
  • 評価:★★★★☆

著者がクレジットカード会社の債権回収部門で働いていたときの話。対人ハック本でもある。

各自の机と電話と債務者一覧だけがある部屋で、また男性社員ばかりの中で、はじめは成績が悪かった著者が、先輩のテクニックを盗んだり、やり手の先輩からの指導などで、メンタルをやられることなくサバイブし、果ては優秀な社員となっていく。

債務者に対しては、先にお礼を言ったり、言い方を変えてみたり、約束は相手に言わせるなど、対人に効くテクニックも書いてあった。

同じ部署で働く同僚や後輩、部下を守りたいという志が芽生えていくところが立派だと思った。
それまでは人材を使い捨てのようにしていた部門が、テクニックを共有することで変わっていったのだ。

ずっと気になっていたカフカの『変身』をようやく読んだ。

ある日朝起きると大きな虫になっていたという有名すぎるできごとが冒頭にある物語。

その日出張の予定があったグレーゴルが出社してこないので上司が様子を見に来る。そこで虫になった姿を見て変な声を上げて逃げて行く(気持ちはわかる)。
虫の兄に慣れてきた妹が気の利いたお世話をしてくれるようになる(さすが妹)。
虫になった自分はというと、人間だったころの好物が受け付けなくなっていったり(腐りかけの食べ物がおいしく思える)、
二足歩行よりも這って歩くほうが楽だと気づいたり(あるいたあとねばねばした液体が残るとか)、
天井のへばりついて安心していたのが、たまにどすんと落ちたり、
おや、カフカさん、ひょっとして虫になったことあるの?というぐらいに描写が生々しい。

巨大な虫で、甲羅が硬くて、無数の足があるとあるので、どんな虫かと想像するのも楽しかった。

終わり方は予想外だった。家族であっても姿が変わっちゃうとあんなふうになってしまうものなのか。

短い話なのに情報量が多くて再読してもまた楽しめるような気がした。