物語消費しすぎ地獄へようこそ

何かしら作られたもの、作られてしまうもの=物語を消費せずに一日を終われない。

月のふりかえり 6月~小説編

梅雨だったね~

  • 分類:小説
  • 作者:竹内真
  • 題名:だがしょ屋ペーパーバック物語
  • 出版社・レーベル:だいわ文庫
  • 評価:★★★☆☆

ヤマトさんという名前の70代の女性が営む駄菓子屋兼古書店(文庫本中心)をめぐるお話。
ヤマトさんがお店に訪れるお客に駄菓子とともに文庫も勧める。

ヤマトさんのしゃべりが浅香光代内海桂子みたいで、ちょっと現実味に欠ける気がした。要はキップのいい元気な江戸っ子女性というキャラ付け。
主人公の僕こと祥介は元ホストで脚本家志望だが今はフリーター。途中からは駄菓子スナックを開き、女優志望で小さな劇団に研修生として所属している恋人の鈴をフロアレディとして働かせたいなどと適当なことも考える男で、

お前、彼女の夢を何だとおもっているんだ

とその勝手さにあきれた。

ライト文芸、キャラノベさ全開の作品だと思った。

  • 分類:小説
  • 作者:ケイト・エリザベス・ラッセ
  • 題名:ダーク・ヴァネッサ(上)(下)
  • 出版社・レーベル:河出文庫
  • 評価:上★★★☆☆ 下★★★★☆

中年男性の高校教師に人生をふみにじられた女性の話。
主人公のヴァネッサは高校時代に当時英語を担当していた中年男性教師と関係をもっていたが、卒業して10年たって他の元女子高校生に高校時代のセクハラを告発された彼のことをまだ考えていた。
彼女は彼との高校時代の関係がロマンチックなもので、性的暴力を受けたとは思っていなかったが、その中年男性教師は他の何人もの女子高校生も触ったりしていたのだった。
その教師をセクハラで告発をした後輩の元女子高校生のテイラーはネットで誹謗中傷され(ありがち)、ヴァネッサも彼女のことを快く思っていなかった。
しかしそのヴァネッサも成人してからも他の男性ともうまく関係が築けないなど、人生を台無しにされていたのだ。が、それを高校時代の経験のせいだと認めようとしなかった。
このあたりの葛藤をもっと書いてほしかった。ヴァネッサの頑固な性格ばかりが印象に残り、彼女に同情する気があまりしなかった。

ところが、解説に書いてあったこと、小児性愛者というのはターゲットを見定めると、少しずつ懐柔してその関係がまるでターゲットが望んでいたかのように誘導してその関係を意のままに操る(こういう行為を「グルーミング」という)のだというような説明を読んでこの小説の怖さがやっとわかった。
本人が教師との関係が健全で、彼は自分を愛していたのだと信じていても、それは相手にそう思わせるように誘導されているだけだということが多いということだ。
ヴァネッサもカウンセラーに話すことで本当のことに気づくのだが、日本はそいう文化というか習慣がないので、心を病んでいる人が多いのではないかと怖くなった。