内科医の早坂ルミ子は33歳。患者からの評価は低め。なぜかというと場にそぐわない言動があるからだ。いわゆる空気や行間が読めないタイプ。
ある日の昼食時に、花壇の植え込みに聴診器が落ちているのを拾う。
この聴診器が不思議なもので、あてた相手が思っていることが聞こえる。またその人を過去をやり直す幻想へと誘うことができる。
ルミ子先生が担当する末期癌患者は年齢も性別も境遇も様々。ただあの時こうしていたら今よりましだったかも、今よりもよりよい人生が送れたかもと後悔しているという共通点がある。
過去をやりなおしてみて現在と照らし合わせ、たいていは今のほうがいいと言うが、そればかりじゃないところが一味違うなと思った。
誰しもあの時こうしていたら、という思いはあるんだと思う。
そういう思いから妄想にふけることをわたしもやったりする。これがけっこう楽しかったりするのは、たぶん今を受け入れているからなんじゃないかと思う。
エピローグでルミ子がやったことから、あの聴診器はもしかしたら...とその謎を考えても面白かった。
この著者の作品は初めて読んだが、今ドラマでやっている「結婚相手は抽選で」の原作者なんですね。このドラマも題名から受ける印象と全然違って、笑えるという意味じゃない面白さがある。
- 作者: 垣谷美雨
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