物語消費しすぎ地獄へようこそ

何かしら作られたもの、作られてしまうもの=物語を消費せずに一日を終われない。

まとめて読了(小説編)

  • 分類:小説

花のようする

  • 作者:藤谷治
  • 評価:★★☆☆☆

文庫が出た時に気になって、改題前の本が図書館にあったので借りて読んだ。
旬を過ぎたがそれ故に出演オファーがある女優とかつて巨億の富を稼ぎながら現在は無一文の元デイトレーダーカップルが、世田谷にある古い家を買うことで人生が少しずつ変わっていくという話。
この二人が好きあっているというのは頭ではわかるんだけど、なんかしっくりこないというか、いつ男のほうがDVに走ったり自殺してしまったりしないかすごーく気になった。
大きなできごとも起きない日常を描いた小説。退屈といえば退屈。

花のようする

花のようする

([ふ]7-2)きなりの二人 (ポプラ文庫)

([ふ]7-2)きなりの二人 (ポプラ文庫)

雪の鉄樹

  • 作者:遠田潤子
  • 評価:★★★★☆

かわってこちらはとんでもない事件が次々と起こって、これは誰も幸せにならないのでは、とハラハラしたが収まるべきところにおさまって安心した。
30代の若白髪が目立つ庭師の曽我雅雪は身体の大部分にやけどをおって生死の境をさまよった過去がある。また、近所の家で中学生の子の面倒を見ているが、その祖母からは疎まれている。
なぜそんなことになったのか、というのが徐々に明らかになっていく。
最後はとてもよい終わり方でカタルシスを得られるのだが、すべての元凶が雅雪の祖父(サイコパスっぽい)にあり、また起きる事件が凄惨なのが★マイナス1たるゆえん。

雪の鉄樹 (光文社文庫)

雪の鉄樹 (光文社文庫)

福家警部補の挨拶

古畑任三郎
コロンボ

何も悩まず、考えずに読める本。

福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)

福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)

ぼくの守る星

  • 作者:神田茜
  • 評価:★★★★★

あ、文庫になっている!
神田茜の本は、『女子芸人』『フェロモン』(文庫では改題して『([か]9-1)好きなひと (ポプラ文庫 日本文学)』)を読んでからこれから著作は全部読む!と思ったぐらい好きになったが、この本でさらに好きになった。
主人公であるディスレクシア(読字障害)の中学生・夏見翔くん、その両親、同級生、その親、最後にまた主人公と視点がつぎつぎに変わって語られるそれぞれの抱える思いと悩み。
親が思うほど子どもは気にしてなかったり、その逆に子どもがわかりすぎてしまっていたり、人生は思うほど簡単ではない。
ラストシーンが神々しくて、とてもよい気分にひたれた。

講談師らしく、ふっと笑える表現もところどころ見られたのも楽しかった。

ぼくの守る星 (集英社文庫)

ぼくの守る星 (集英社文庫)

ディス・イズ・ザ・デイ

2部のサッカークラブを22チーム作り上げ、小説の舞台となるある年の順位表、はてはエンブレムやチームカラーまで作ってしまった著者に敬服。
エンブレムでは鯖江弘前三鷹が好きかな。
それぞれのクラブをアウェイ戦も現地まで観戦に行くようなガチサポから、なんとなく気になっているライトサポ(でも誰しもしまいにはホームゲームはスタジアムに見に行くぐらいになる)まで、それぞれにそれぞれの事情と楽しみ方ができていて、また老いも若きも男も女もそれぞれのスタイルで楽しんでいて、サッカーってすごいなと思った。

面白かったのは、登場人物の大半がひとりで行ってひとりで観戦するという、本当のサポーターと呼べるような人たちであったところ。ぼっち観戦は思っているよりも楽しいし、意外とそういうサポは多い。

連作短編で、特におもしろかったのは「篠村兄弟の恩寵」と「権現様の弟、旅に出る」の2編。

「篠村兄弟の恩寵」は身寄りを亡くした兄弟が、窓井という選手と出会い、応援したり交流したりする中で家族として兄弟としての絆を取り戻すのだが、その選手の移籍によって兄弟間がぎくしゃくしだすという話。ラストで少し泣いた。窓井選手がいい選手なんだ、これが。

「権現様の弟、旅に出る」は、遠野FCの姫路での遠征試合で、神楽を舞うことになった若者たちが、遠野FCのサポになっていく話(かなりざっくりしたあらすじです)。権現様とは


八幡神楽権現舞

獅子舞みたいな頭だそうで、この短編では主人公の男性が通販サイトで権現様の色違いの「弟」をみつけて購入する。勝手に弟なんて言ってしまって申し訳ないと頭を下げる若者たちが微笑ましい。それから神楽を舞う団体の彼らは遠野FCの試合をスタジアムで観戦するようになる。主人公の男性は弟の頭をつけたままだ。ときどきかちんと歯を合わせるという描写が面白かった。ほのかに恋も生まれそうだったし、何しろ東北生まれの若者たちがとても美しくまぶしかった。

エピローグは2部1部の入替のプレーオフ戦で、うまくできた小説だなー、さすがだなーと思った。
あと表紙の絵と挿画は内巻敦子さん。表紙には小説の主だった登場人物が描かれていてとてもかわいい。
本書は本の雑誌の2018年上半期ベスト10の6位に入っている。

ディス・イズ・ザ・デイ

ディス・イズ・ザ・デイ