物語消費しすぎ地獄へようこそ

何かしら作られたもの、作られてしまうもの=物語を消費せずに一日を終われない。

まとめて読了(小説編)

  • 分類:小説

わりなき恋

  • 作者:岸恵子
  • 評価:★★★★☆

わたしにとって初・岸恵子さんの本。文庫になったということで本屋で気になったが単行本が図書館にあったので借りて読んだ。

70歳の働く女性と一回り年下のビジネスマンの男性の恋。
主人公の女性は著者を彷彿とさせるキャラクターで、70歳だけどすごく元気でかっこいい。
飛行機のファーストクラスで隣り合わせた大企業の重役の男性と恋仲になる。
この男性もすべてにおいてスマートでかっこいい。かっこいいけどゲスい。非常にゲスい。そしてずるい。

「わりなき」とは「理無き」と書いて「理屈や分別を超えて親しい。非常に親密である。*1の意味。
落ちてしまった恋には理屈も通用しない。
二人の関係には途中何度か波風が立つけれど、数年にわたって続く。しかし不安定な関係は終わりを迎えるもので、小説冒頭で触れられた男性側の事情で壊れてしまう。

70過ぎての恋愛なんて、たぶん一般人にはほとんどないよなー、リアリティはないよねーと思いながら、小説の世界として楽しんだ。
ちょっと古臭いセリフ回しが逆にこの世界に合っているように思った。

わりなき恋 (幻冬舎文庫)

わりなき恋 (幻冬舎文庫)

しょっぱい夕陽

  • 作者:神田茜
  • 評価:★★★★☆

「しょっぱい」の意味は登場人物の年齢にある。
この小説集は連作短編ではなく、48歳の男女それぞれの事情を集めたもの。
つらかったり情けなかったりする事情にも裏があり、別の方向から眺めてみたら印象はまったく変わる。

本作でも新作講談師らしいちょっと笑える言い回しがあって、おもしろかった。

「息子のサッカー練習場は恋のピッチ。コーチとの会話は恋のドリブル。遠くから視線が三回合えばハットトリック。」(肉巻きの力)

コンビニの前に停まっているバイクにまたがって走り出したくなるくらい星也が愛おしくなった。(もえぎの恋)

神田茜はやめられないな。

しょっぱい夕陽 (講談社文庫)

しょっぱい夕陽 (講談社文庫)